戸川純「東京の野蛮」


1987年発表のベスト盤で、歌姫・戸川純の黄金期を理解するための絶好の1枚。
しばらく絶版が続いていましたが、この度めでたく再版となったので、この機会を逃すまじと。
戸川作品の場合、いわゆる「コンセプトアルバム」が多いので、それらを1枚に編集するととても散漫な印象になってしまうのは仕方のないこと。
一方、戸川純というキャラクターの多様性は見事に伝わってくるので、その「エッセンス」を楽しむものとして捉えた方がよいかも知れません。
全12曲、文部省唱歌からパンクまで、驚くほどに表現の幅が広い戸川純
寺山修司唐十郎土方巽らが牽引したアングラ文化の豊かな到達点のひとつを示す、いかにも1980年代らしい、きわめて「演劇的」なパフォーマンスと言えましょう。
パッヘルベルのカノンを引用した「蛹化の女」はパンク版との2曲連続で鳥肌ものだし、もちろん名曲中の名曲「レーダーマン」も収録。
こういう復刻盤は昔を懐かしむアイテムとして買うことが多いのですが、戸川純だけは現在もなお「唯一無二」にして「至高」であるがゆえ、30年経っても全く色あせていないんですよね。