【模型】

1/24「シトロエン DS19」


欧州の名車を次々にキットでリリースしてくれるエブロ。
特に昔の仏車(ルノーシトロエンね)は奇抜で個性的。飾り気のない大衆車でさえ「ござっぱりしてるけど実はカシミアセーターなんだよね」みたいな深い味わいがありました。
モータースポーツで活躍したルノー5、カリ城に登場した2CV以外の仏車はほとんど知られてないし、おバカなドイツ車信仰がはびこる日本では特に「何でそんな壊れやすくてダサい車に乗ってるの?」という反応がほとんどでしたね。プジョーが「おしゃれイメージ」戦略をうまく定着させて、日本では人気が出たけど、205以降ははっきり言ってつまらない車ばっかりですよ。ゆえにプジョーの現行車に乗っているデザイナー、建築家、ファッション関係者を僕は一切信用しないことにしています(笑)。
ということで前置きが長くなりましたが、このエブロのDS19、まず値段がちょっと高いです。でも、数十年前にリリースされたエレールの1/16は半端なスケールだし(キットとしても大味らしい)、1/43のキットはちょっと物足りないので、最新技術による1/24でのリリースはまさにマニアとっては「待望」と言ってもいいでしょう。マニアックすぎる車だから単価が上がるのは仕方ないし、当然生産数も少ないだろうから、僕はがんばって2個買いました。
パーツ数はほどよくまとめられ、特にメッキの質感は昔の車っぽくってお見事、そのまま使って何の問題もなさそうです。FF方式のエンジンと駆動系もしっかりと再現され、リアのサスアームやスフィアまでパーツ化されているので、油圧で車高が変わる斬新な「ハイドロニューマチック・システム」のメカニズムもある程度理解できるなど、立体教材としての価値もあり。車高は2種の選択式ですが、さすがに可動式に改造するのは難しそうですね。内装も有名な1本スポーク支持のハンドルが良いチャームポイントになっています。
フロントグリルを持たず、埋め込み式ヘッドライトを採用した、1950年代の最先端空力マシンでもあるDS19。時代性を考えると、とんでもなく異端のデザインであったことが分かりますし、かなり大きな車だったことも立体で手にして初めて「実感」できます。
デザインはフラミニオ・ベルトーニによるもの。2CVのデザインで有名ですが、もともとは彫刻家であり、DS19以降は本業の彫刻作品の制作に没頭していくことになります。DS19はかつて未来派が願った芸術と科学の融合を見事に実現させた、まさに「未来」を予感させる芸術品だったように思えます。
1950年代の技術とデザインの挑戦の物語がギュと詰まったDS19。そこに思いを馳せながらキットを組む。プラモデルという趣味の醍醐味が存分に味わえる1点です。