『ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ』


文春ジブリ文庫」なるものまで創刊されるほど、商売的においしいジブリネタ。
もはや敵なしの圧倒的なブランド力ですね。
マニア御用達のアニメ作家から国民的映画監督に、そして国際的な名声を獲得していく宮崎駿の軌跡をずっと見続けた世代として、ナウシカの頃のアクの強い個性が失われてしまったのは何とも寂しくあります。
そうしたナウシカをテーマにした評論集、しかも安いので、試しに買ってみました。
もどきの思想家内田樹さんを筆頭に、現代を代表する知識人がナウシカについてアレコレ語っていますが、全体の論調としては「震災以降」が強く意識されており、「ああやっぱり」という感じ。
もちろん批判めいた文章など一切なく、ジブリの御用本にとどまっていた点もちょっと残念。
しかも、動きの気持ちよさや画面設計の巧みさなど、「アニメ」としての魅力に触れたものも少ないし・・・。
アニメから思想や哲学ばかりを読み取ることは愚かだと思うし、仮にそうした要素があるとしても、その背景にある社会状況や政治思想との関連性まで踏み込まないとほとんど意味はないように思う。
単純な話、僕はカタルシスを味わえる「娯楽アニメ」としてナウシカを高く評価しているので。


文藝春秋刊。