江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間


1969年に公開された東映映画。
監督は鬼才石井輝男
そのタイトルや扱う題材の過激さからテレビで放映されたことは一度もなく、さらにはソフト化されたことすらない幻の1本。
ミニシアターでごく稀に上映され、一部マニアの熱狂的な支持を集めているカルトムービーです。
しかし米国では何の問題もなく2007年にDVDが発売されており、今回はそれをゲット。
・・・短絡的な人たちはすぐ「米国では発売されているのに!」みたいな文句を言うけど、もともと「禁忌」ってコミュニティごとに異なるものゆえ、それは仕方のないこと。
少なくとも、そこから「だから日本は遅れている」といった論に持っていく類いの人間を僕は全く信用する気になれません。
ということで映画の話。
原作は江戸川乱歩となっているけど「全集」というタイトルが付いているように、乱歩の様々な作品をコラージュしたもの。
ベースは『パノラマ島奇談』と『孤島の鬼』で、そこに『人間椅子』や『屋根裏の散歩者』等のエッセンスが付加された感じ?
ストーリーは青年医学生が自らの出自を探る内に奇怪な事件に巻き込まれていくというもの。
青年医学生は、とある島で、身体改造を施した「奇形人間」による理想郷を作ろうとしている実の父親と出会うのですが、その父を演じているのが暗黒舞踏土方巽ということで、もちろんその「動く土方」が目当てで購入。
土方の演技は舞踏そのもの、奇形人間を演じているのも暗黒舞踏の面々なので、その身体表現は相当に鬼気迫るものがあります。
鮮明なカラー映像で舞踏が鑑賞でき、しかもしゃべる土方まで楽しめる訳だから、これはマニア必携の1本です。
直截なグロ描写ではなく、どこまでも暗黒舞踏のパフォーマンスとして成り立っているので、視覚的な不快感は皆無。
ただし、精神にはかなりダメージを食らいますがね(笑)。
さらには怪優小池朝雄の異常性愛者の演技も必見だし、明智探偵役の大木実吉田輝雄なども良い味出してます。
本作を観ると、アイドル人気におんぶにだっこの昨今の映画事情がひどくお粗末に思えるし、役者も画一化が進み、質がかなり落ちてきていることも強く実感できますな。
で、ラストは知る人ぞ知る「人間花火」。
明智探偵によって理想郷計画を断念させられた父は自殺、青年もまた自らの不幸な出自を悲観し、愛する女性(実の妹)とともに花火の爆発で四散して映画はおしまい。
う〜む、石井輝男、侮れん!