「帝都物語」


荒俣宏の原作(「神霊篇」から「龍動篇」まで)を映像化したもので、公開は1988年。
実相寺昭雄監督作品で、大正期の銀座の街並が巨大セットで再現されるなど、特撮ファンからも注目を集めた1本でしたね。
劇中に多数登場するクリーチャーは着ぐるみや操演の他、コマ撮りでも表現され、CG全盛期の現在では考えられないほどに動きがギクシャク(笑)。
でもそれが不思議と良い味を出しているんですよね。
ラストに登場する護法童子がH・R・ギーガーデザインということでも(少し)話題になりました。
などと書きつつ、公開後の評価はさほど高くなかったんですよね、確か。
個人的にも「金をかけたB級映画」という印象しか持っていなかったのですが、ちょっと必要にかられて今回久しぶりに見直してみたところ、意外や意外、かなり面白い!
画づくりは半端なく凝っているし(CGが全盛になったことで、むしろこの映画が良く見えるようになった)、あの物語をよくここまでまとめたなと思うし、なにより大正期の世相をとてもうまく描き出している。
主役の嶋田久作も、実在の人物に扮した俳優の面々の演技もデフォルメが入っていてすごく楽しめました(さすがに今和次郎はあんな感じじゃなかったと思うけど)。
例えば學天則を作った西村真琴の役を西村晃が演じていたり、渋沢栄一幸田露伴寺田寅彦らのキャラ設定の妙、さらには浅草十二階や地下鉄建設の話など、近代史の知識があればあるほど面白く見ることのできる、ある意味荒俣的な仕掛けも満載。
特撮を目的に見るのではなく、成熟した大人の遊び心と知的好奇心を満たす映画と捉えると評価は一変するのかも知れません。