「11のとても悲しい歌」


ピチカート・ファイヴの解散から早くも10年なんですね。
この記念の年に小西康陽さんのソロ・プロジェクトとして、「PIZZICATO ONE」が始動。
この仕掛け方はいかにも小西さん的だけど、解散後の10年はどことなく「散漫な活動」という印象が強かったので(野本かりあのプロジェクトも尻つぼみだったし)、今回こそは充実した活動を期待したいところ。
まず第1作は、まさに「エヴァーグリーン」という形容がぴったりな「悲しい」名曲群のカヴァーもの。
ユニバーサルのジャズレーベルから発売ということで、野太いベースと硬質感のあるピアノを軸に、管楽器やストリングスがさりげなくも複雑にからんでくる、しっとりと深みのあるジャージーなトラックに、マリーナ・ショウロジャー・ニコルズ & ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ、ニコル・ウィリスなど実力派の個性的なヴォーカルが重なる、とても上質な1枚となっています。
「ワン」、「イマジン」や「バンバン」、「メイビー・トゥモロウ」などの聞き慣れた楽曲が、これまでと違った印象で聞こえてくるから不思議。
自殺をモチーフにした「もしもあの世に行けたなら」のアレンジに象徴されるように、悲しい歌を明るくポップに仕上げる小西さんならではのセンスも健在で、その表層的な喧噪がより奥底にひそむ虚無へと聞く者を誘ってくれるかのようです。
締めの「長くつらい登り道」( feat. ロイ・フィリップス)も最高にcool!
うん、とても素晴らしいアルバムです。