『エムエム三太』


1965年に『少年サンデー』で連載がはじまり、その後ライバル誌であった『少年マガジン』に移って執筆が続けられた「エムエム三太」がついに完全復刻。
『サブマリン707』、『青の6号』と並ぶ小沢さとるの代表作です。
超人的な能力を持った牧村三太が主人公の冒険活劇物語で、ハラハラ、ドキドキ、ワクワクしながら一気にページをめくってしまいました。
まさに「少年漫画の王道」といった印象で、アメリカとソ連の冷戦構造や得体の知れない秘密結社など、高度成長による反映とその一方で日本が抱える不安や闇の部分を取り入れたあの時代ならではの1本と言えましょう。
大きな物語」が崩壊した現在では成立し得ない物語かもしれませんが、これを読むと今の漫画の安易さやくだらなさがよりはっきりとしてしまいますね。
今の漫画家は絵はうまいけど表現することはヘタ、描写や物語も狙い過ぎで、昔の漫画のように省略や余白から喚起されていた想像力が全く働かないのです。
作り手もかつての漫画を研究することはなさそうだし、それに夢中になっている受け手も同様。
この「断絶」は漫画文化にとっても決して良くない状況だと思うのですが・・・、その点で僕は件の東京都の条例には賛成の立場をとらざるを得ません。
漫画もアニメも好きだからこそ、今のような「特定層に媚びて金を稼ぐ」だけの商業主義的傾向にはストップをかけてもらいたいと思ってます。
・・・などと、読了後に考えてしまいました。
ともあれ堅苦しい話は別にして、小沢さとるの真骨頂であるメカも魅力的なこの漫画。
愛車「エムエムモンスーン」やオートジャイロ「エムエムマシン」の活躍にはこの歳になっても胸が躍ります。
再販にあたって描きおろされた「図説・これがエムエムマシンだ!」も収録されていますが、これがまた当時を思い起こさせる感涙もののイラスト!
イマイの金型をバンダイが保管しているならぜひこの機会に再販を!・・・、ってどう考えても無理でしょうね。