あの素晴しい音をもう一度


加藤和彦を丸々1冊で追悼した初のムック。
表紙の写真をはじめ、中に収められたポートレートのどれもがカッコイイ。
今までの追悼特集ではそのチョイスがいい加減だったんだよなあ。
内容的にも本人の生前のエッセイやインタビュー、小田和正細野晴臣との貴重な対談記事の再録をはじめ、きたやまおさむ高橋幸宏小原礼など交流の深かった関係者へのインタビュー、サエキけんぞうの総論、松山猛横尾忠則立花ハジメ岡田徹あがた森魚岩井俊二ら業界人のエッセイ、高野寛曽我部恵一らの楽曲ベスト5、とり・みきらのトリビュート漫画、さらには編集者、評論家の各論、そしてもちろんディスクレビューや略年譜まで、あらゆる角度から加藤和彦が再検証された充実の内容となっています。
加藤和彦という人間の「功」と「罪」まできっちりと記されており、逆説的に編集者の加藤和彦に対する愛がひしひしと感じられる1冊。
なぜ90年代以降に加藤和彦の名が消えてしまったのかも、読み通せば何となく分かってくるように構成されているし、そういうプライベートな部分は抜きにして正しくその業績を検証する必要があるのだという想いも読み取れます。
一気に読むのは勿体ない、加藤和彦の人と仕事をじっくりと考えるためにもう一度じっくりと読み直してみよう。

河出書房新社刊。