1/00ウォーカーギャリア


かくいう僕も26年前の「発売中止事件」に酷く打ちのめされた一人なので、このキットはまさに「待望」という形容句がふさわしい一点です。
変形・合体が可能なギャリア本体に、ライフル、バズーカ、ブーメランイディオムといった劇中に登場した全武装とジロン、ラグ、チルのフィギュアが付属。
発売当日まで伏せられていたサプライズは、1/100「レッグタイプ」2機とマリア・マリア、ビリン・ナダのフィギュア。
プラモデルにしては珍しいオビ(『模型情報』の編集長だった現トイズワークス社長の加藤さんの顔写真と「成仏しましょう」という感涙のコメント入り!)でパッケージ部分が隠されるなど、仕掛けは確かに面白い。
レッグも小スケールながらしっかりとした出来で、トータルにみると商品としてのバリューはほぼ完璧、です。
デジタル設計にもかかわらずギャリア特有の微妙な曲線はよくトレースできているし、プロポーションも設定画と劇中双方の印象を巧みにまとめているように思えます。
確かに股間の幅は若干広いように感じられるものの、いかにもウォーカーマシンらしい大地にしっかりと根をおろす安定した三角形のプロポーションとなっており、これはこれで的確なバランスと言えるかも知れません。
既存キットとの整合性が図られたディテールも良い雰囲気だし、パッケージの白箱仕様もファン(=購買層)の心理に沿えば当然の措置でしょう。
実際、このパッケージをきっかけに往時のいろんなことを懐かしく思い出しましたしね。
しかし、何だかうれしさよりももやもやとした気持が先行してしまうのは何故でしょう。
それは端的に言って、やはりデジタル特有の単調さが目立つという点。
パーツを手にとって眺めていると何か味気ない・・・、湖川友謙が手で引いた勢いと抑揚を持つラインの「表層」のみが写し取られているように感じてしまいます。
例えば、1/100「カプリコタイプ」のラインと比較すればその差は一目瞭然でしょう。
つまり、25年前のキットとの連続性を強調しすぎるあまり、逆に埋めることのできない時代の溝を突きつけられた気がしてしまったのです。
白箱のデザインもオリジナルとは似て非なるもので、当時のパッケージの微妙な文字組みや余白の取り方はほとんど無視されています(それでいて、側面のレイアウトはガンプラの現行フォーマットそのままなのも何だかチグハグな感じ)。
同梱されるハンドブックの版型やレイアウトも「模型情報」へのオマージュらしいけど、こちらはむしろオリジナルよりも間が抜けた低レベルのデザインで、何だかガックリ。
湖川友謙のインタビュー記事が掲載されていたのは粋だなと思ったものの、なぜかそのページだけ横組みだったりして(笑)。
ホビーショーでの初公開から発売に至るまでのプロモーションにつきまとうある種の胡散臭さもずっと気になっていたことだし、その方向性もある特定層のノスタルジーを刺激するという点にのみ絞られ、このキットから未来を志向しようとする意志がすっぽりと抜け落ちていたのはいかがなものでしょう。
「あの懐かしい時代へ回帰する」という視点ではなく、サンプリングやリミックスといったシミュレーショニズム的なアプローチからプロデュースすべきだったように感じてなりません。
すべからく、その方がこのキットに対する理解も進むし、デジタル社会の現代にリバイバルさせることの意義も明確になったと思うのです。
懐古主義的な観点から離れてもなお、バンダイの底力を見せつけた2008年時点での傑作キットであることに間違いはないのですから。