小西康陽「散歩と雑学」


タイトルはもちろん、植草甚一(『ぼくは散歩と雑学がすき』、1970年)からの引用。
副題に「小西康陽のコラム1993-2008」とあるように、15年間分の様々なエッセイ(と言ってもレコードネタが中心ではあるけれど)がギッシリと詰め込まれた一冊で、暇な時、パラパラと読み飛ばすにはもってこいの本です(これ褒め言葉)。
1970年代後半〜1980年代初頭に自己形成したオタク第一世代はジャンルが違えど、みな共通する「感性」や「匂い」を持っていますよね。
頭でっかちなディレッタントと異なり、生産、行動に直結した知識と欲望だから、彼らの話は全く嫌味じゃない。
植草甚一はもとより内田百輭伊丹十三赤瀬川原平萩原朔美渡辺和博といった頑固かつ洒落た「嗜好の人」の系譜に連なる(と勝手に考えている)小西さんの、ひねたレトリックが存分に味わえる一冊です。
ある特定の若い世代はかなり感化されるだろうし、ぜひ感化されて欲しいとも思ってます。
朝日新聞社刊。